『マンガ学への挑戦』

タイトルの通り、本書はマンガを語る「枠組み」、即ち「マンガ学」構築への挑戦だ。
著者は、これまでメディア論、表現論、世代論、大衆文化論など、別々の方法で語られてきたマンガについての議論を整理し、表現としてのマンガ、産業、及びその権力関係としてのマンガ、コミュニケーションとしてのマンガなど、様々な角度から「マンガ学」へ向けての議論を展開している。
「自分史がそのまま戦後漫画史になる」と竹熊健太郎が評する著者だけあって、その議論はこれまであったマンガ論の様々な「枠組み」を振り返り、さらに新たなる可能性を開くものである。特に第10章の「マンガ受容モデル」は興味深い。
業界人ではないが、マンガをよく考えたい単なる一読者にとって、大変ありがたい本である。
巻末に豊富な参考文献表があり、読者はこれを頼りに、著者の議論を検討したり、自らの議論を展開したりすることができる。
残念なのはリストに含まれるうち、かなりのものが絶版だということだ。