『トウヤのホムラ』

トウヤのホムラ (富士見ファンタジア文庫)

トウヤのホムラ (富士見ファンタジア文庫)

第16回ファンタジア長編小説大賞準入選作。
日本神話の世界観を下敷きにした伝奇アクション。
水の神を祭り続けてきた船津一族に「火の神」として生まれてきてしまった少年、船津東哉は、その力ゆえ、一族によって、結界の中の社に幽閉されていた。が、一族の神域に起こった異変を解決する為、従姉妹の麻里によって封印を解かれる。
物語は、密かに一族への復讐を企てる東哉と、彼を利用して、一族の長になろうとする麻里を軸に展開してゆく、バトル+恋愛もの。
神話、ファンタジーの世界をアニメ風にアレンジした、よくも悪くも富士見らしい作品で、狭量な主人公と、冷徹なヒロインとのやりとりや、その後、少しだけ絆が深まるあたりは、素直に楽しめた。決着の付け方も悪くないと思う。
残念なのは、脇役の行動とバトルがご都合的だということ。この作品の場合、主人公が神なので、力を物語的にどうやってコントロールするかが問題になるが、それをヒロインの気分次第にしてしまったからだろうか。恋愛要素とバトル。両方の駆け引きがうまくシンクロしたらもっと面白いかもしれない。
ベタだけど、「今後に期待」