『タマラセ―彼女はキュートな撲殺魔』

ドツいたもん勝ち。
背景設定は古代日本に存在した阿弖利為でおなじみ、東北の「蝦夷」が実は自らの霊体で武装する「魂裸醒(タマラセ)」という超能力を持っており、坂上田村麻呂の討伐に破れた後も、残った人々が集落をつくり、その能力を生かした暗殺集団として、歴史に影響を与え続けた。そして現在…。
という伝奇風のものだが、タイトルと表紙からわかるように、作品の雰囲気としてはおどろおどろしさより、大味で、そしてどこか乾いたものになっている。
ギャグが多めで、登場人物も変人というより、変態ばかり、霊魂が関わっている割には原始的で物質的、ヤンキーの喧嘩の様な殴り合い。イラスト、日向悠二のメリハリのきいた描線と、平面的な塗りも相まって空中コンボがつながるタイプの2D格闘ゲーム、もしくは少年漫画のようなバトルが演出されている。
その中に時々、挿入されるヒロインの父、「三千人」が見せる、暗殺集団らしい生死に対する割り切りの描写が、少年漫画的ご都合世界をドライに引き締める。殴りあっても敵は敵。
ヒロイン、夏月のですます調は最後までなじめなかったけど、随所に漂う田舎描写が微妙にツボ。
後に残るものはあまり無いけど、読んでいる間は楽しめた。

6/10