『放課後退魔録(る)1ワラキズ』

放課後退魔録る(1) ワラキズ (角川スニーカー文庫)

放課後退魔録る(1) ワラキズ (角川スニーカー文庫)

勘違いをしていました。この本を書店で見かけた時、「放課後退魔録(る)←○のなかに『る』」というタイトルから「る組」というゴーストバスターのチームが活躍するシリーズの一作目だと思い購入したのですが、「放課後退魔録」シリーズの続編だったんですね。○の中に「る」というのは要するに続編をあらわす「Z」とか「R」とか「どっか〜ん」の一種だったようで。でも、まあ、新主人公みたいなんで、大丈夫だろうと思いここから読んでみました。
ジャンル的にはSF(スペースファンタジーの略として)風味がずいぶん強い学園妖怪退治ものということになるのでしょう。
全体は4章+1章という構成ですが、導入部、不思議な力の込められたウサ耳バンドを拾ってしまった新主人公の女の子、米子とパートナーの男の子、カネルが、旧シリーズのキャラクターと出会うまでは退屈でした。前のシリーズを読んでいたら「おおっ」てところがあったんでしょうが。
主人公ペアは、何というか、本当はライトノベルの登場人物じゃないのに、無理矢理それっぽいキャラを演じさせられているような不自然さがありました。でも後半、ストーリーが転がり出した時は逆にこれが旧シリーズのキャラクターの「キャラっぽさ」に対していい感じでアクセントになり、この作品の底に独特な穏やかさを生み出しています。
本当は「萌え」記号で一種作者の怨念のこもったものであるべき「うさ耳」が米子の人物造形に何の関与もしておらず、ただの「飾り」になっている。多分、このせいで、米子のキャラが弱くなっているんだろうし、他のライトノベルとは違う雰囲気のフックになっているのだと思います。
妖怪はとても人間らしく書かれていますし、水木しげる作品でおなじみのものも多いので、オタ臭バリバリの装丁*1に似合わず、意外とSF(すこしふしぎ)話として、一般読者でも読めそうな気がしました。
ジュヴナイルのにおいがします。

7/10(試験的に点数化)

*1:これはこれでグッジョブです。装丁を手がけた伸童舎ってひょっとしてワースブレイドの伸童舎?