『よくわかる現代魔法』

よくわかった。現代魔法。
いわゆる異世界を舞台にした物語で大事なものに「世界観」がある。それは魔法の名前とか、架空の街の名前とか、キャラクターがどんな服を着ているか。等の「設定」のことではない。
文字通り、世界をどのように観るか。という規則。異世界を舞台にしたフィクションを生産するための技法である以前に、私たちが目の前に広がる原風景を「現実」として構築するための規則だ。規則は言葉によってあらわされる。すなわち、名付けることによって、世界は創られる。「世界観」とは「名付け方」の別名でもある。
「魔法」という名前をいったんそれが指していたものから開放し、他のものに「魔法」と名付けてみる。「科学」のシンボルである数学によって成り立つコンピュータプログラムはそうやって「魔法の呪文」と名付けられた。
多くの場合我々のものとは異なる「現実」を構築しなければならないライトノベルにとって名付けは最も重要な作業だ。何の秩序もなしに名付けるのなら、それは世界以前の混沌となる。いかに我々の「現実」と言葉のレイヤーをずらしていくか。いかに我々の「現実」を再構築していくか。我々のものとは違っても、そこに生きるものにとって存在する価値のある「現実」をいかに作り出すか。
創造神とのアナロジーで表現される行為をこの作品は高水準やってのけた上に、それとプログラミングとのアナロジーも提示してくれた。
どうやら物語の神様はコンピュータも得意らしい。

面白かった。おすすめ。馬鹿にしてごめん、スーパーダッシュ文庫。でもやっぱりもっさいよ、その名前。