『南青山少女ブックセンター』

南青山少女ブックセンター〈1〉 (MF文庫J)

南青山少女ブックセンター〈1〉 (MF文庫J)

前半8割、裏切られたと思った。もちろん悪い意味で。『南青山少女ブックセンター』じゃなくて『南青山「美」少女ブックセンター』じゃないか。本屋の再建を目指して、あの手この手で知恵を出す少女たちの働く姿がまぶしい小説かと思いきや、悪ノリだけで突き進むギャルゲーシナリオのごときものがひたすら続く。CGも、ボイスもない、誰とくっつくかも選べない。出来損ないのギャルゲー。
物語中での本屋はただのファミレスでも代用可能な使いかた。いまいち設定を生かしきれてない。けど、ギャルゲーの設定としてそれ自体を考えるなら、女の子店員だけのブックセンターというのはツボをついていると思う。単純に自分の趣味だけど。
美少女書店経営シミュレーション。とらのあなにするも、リブロにするも、書泉にするも、街の本屋にするもあなた次第。制服もメイドやバニーガール等々が選べ、耳などのオプションも自由自在…まあ、妄想はおいておくっす。
後半2割のこと。クライマックスで思う。ラブコメ要素だけ考えたら悪く無いのかも。キャラはたっている。二人の距離が男性恐怖症ヒロインの「病状」としてはっきり表わされているし、しかもそれは常に小ネタとともにある。「ラ/コメデ」位の割合でよくできたラブ&コメディ。最後のもりあがりはなかなかよかった。きちんとベタに盛り上がったし、きちんとベタにオチがついた。終わりよければすべてよし。
ただ、ある構成をもった盛り上げ方というより、ゲーム用語でいうところの「イベント」をとにかく連続させる方法はやはり文字だけの小説には向かないんじゃないだろうか。ゲーム的なものと「この手の小説」は切り離せない関係にあるとは思うのだけど、もうちょっと通読できるよう小説的にアレンジして欲しい気がする。
タイトルから妄想した「モテない文化系の行き場のないリビドーと裏返った空虚なプライドを満足させる、オタ3:サブカル1の絶妙なネタバランスで展開する勤労文学少女の汗と涙と笑顔と萌えの物語」からはほど遠かった。