電車男 第一話

おもしろかった。フィクションとして。
駄目男の純粋な、身分違いな恋というラブコメディのベタネタや、多くの人に支えられての成長という、ドラマのベタ要素を、「オタク」を随所にあしらいつつ、うまく見せてると思う。
「おまいには俺たちがついてる」は素直に泣けた。ここは「電車男」のなかで一番好きなところだ。
サンボマスターも、道化的に採用されたのかと思ったが、EDのプロモ映像を見ていると、結構熱い。
「世界はそれを愛と呼ぶ」なんて台詞はもう、彼らじゃなきゃ吐けないし。

で、
よく言われる、現実のオタクや2ちゃんねらー電車男プロジェクトが及ぼす影響については
刑事ドラマが、現実の刑事に及ぼす影響が無いように、キムタクのドラマが、現実のレーサーに及ぼす影響が無いように、このドラマがオタクに及ぼす影響など、無い。
確かに、興味本位で2ちゃんねるをのぞく人間が増えたかもしれないし、ネタでアキバにいく奴が増えるかもしれない。それはいい迷惑かもしれないけども、そういう人はブームが終わったらさっさといなくなるわけだし。
オタクを安全化して取り込んでしまおうとする、恋愛資本主義(この用語は本田氏にしか使いこなせない気がする)の陰謀だというなら、一般人や、「マスゴミ」の上をいく妄想力を発揮して振り切ればいいだけのこと。

ドラマには頻繁にオタク記号が出てくるけど、それは純愛ものをストレートに扱うことへの照れ隠しでしかない。
だから、これは植民地的な搾取ではないし、「オタクよおしゃれして恋愛しろ」というメッセージでもない。
第一、ドラマで描かれた電車は「オタク」ではないだろう。どうみても。
こいつは何オタなんだ?ガノタ?声?1/12スコープドッグシャアザクと、キュベレイとパーフェクトガンダムと(ガンプラ略)、水着綾波と並べるのはいいのだが、バニーちゃんのキャラも好きなんだよね?XPならlunaは切るか、徹底カスタマイズするべきでしょう。世代考証違うのはいいのだけど、萌えも叫ばす、作画ウンチクも語らずで、オタク仲間におとなしく引きずられているだけというのはいかがなものか。

主体性がなく、気弱で、でも優しい、「いい人」。
ベタなドラマの主人公そのものじゃないか。
フィクションですよ、これは。

逆に言えば、そんな単純なものを描くことですら、「オタク」の助けが必要なのだろうか。
天下のトレンディーフジテレビ様の夜十時の画面に、DAICON4アニメまがいや、ラジオ会館や、カメコや、アキバ路上ライブや、メイド喫茶(風俗っぽくカスタムしたぴなふぉあ…だとおもう)を映し出してキタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!(いや、AAは無かったけど)まで公共の電波に乗せて、そうまでしないと、純愛ドラマにならないのだろうか。

まじめな話、もうTVドラマは日常の延長線上ではなく、祭りにすることでしか、愛や成長描けないんじゃないだろうか。「101回目のプロポーズ」のような、洗練されてない、しかし、それが無くては、生きる価値が半減する、愛(男女の愛だけじゃなくてね信頼とか)というものは、「普通の人」が主人公のドラマでは徹底的に欺瞞化されてしまい、もう、「弱者」たるオタクに託さなくては、描くことのできないものになっているんじゃないだろうか。(少し前の「障害者」ドラマからその傾向はあったと思う。というか野島伸次はえらかったんだなぁ)

今、世界の中心で愛を叫べるのは
森山未來でも、ぺヨンジュンでもなく、
けものであるオタクなのかもしれないし、

世界の中心で愛を叫べるのならば、
弱者でもかまわない。